
祈り/
それから
MUSIC
祈り/
それから
MUSIC
土の匂い、風のささめき、私達が生まれる遠い前の記憶、不思議とそんなことを思い起こします。
美しいのびやかな歌声とギター。人の居ない大きな木の下で、マスクを取って深呼吸したような感覚を覚えました。
沈む鍵盤
弦の振動
消えゆくメロディの続きを辿るような声
いまここにいない誰かが
オルゴールの歯車を
ゆっくり回しているような
光に照らされて舞うほこり達に
一瞬感じてしまう
懐かしい幸せのような
そんな音楽だと思います
「それから」の使用楽器はエンディングの一部以外アナログな物なのにもかかわらず、今を感じました。
なんだかHOVVDYなんかと同列レベルだと思います。
アコギの擦れ音が良い感じだし、チェロがしっかり支える感じで素晴らしいのですが、やはりボーカルに驚きました。
普通だったら耳に引っ掛かる筈の部分が、すっと通り過ぎて行く。
コーヒーのドリップに似てるかもしれません。旨味をギリギリまで抽出して、灰汁成分がでるギリギリ前で止める。
この曲が良いと感じるのは、実際に鳴っている音じゃない所なんだろうと思います。
歌がすっと通り過ぎて、掴み取れない感じが、記憶の中の場所に戻りたいけれど、戻れる筈もない事を認識するというか…
旧校舎の匂いや冷たい空気、小川洋子などを連想しました。
Smokebees、h-shallowsを経て、ヒロセミキさん(いつもどうりミキちゃんと呼ばせて頂きます)の創作活動が、いよいよ次のステップへ。
新バンド「呼吸」による悠久の時の流れを感じさせる1st EP「祈り/それから」。
日本語詞とゆったりとしたアコースティック編成による楽曲。これまでに比べて大人な感触のサウンドですが、成長(安定)というより表現の領域をどんどんと広げていく音の冒険心を感じます。
「祈り」の真摯な詩(うた)と空に舞う楽器達。「それから」ではアコースティック楽器による音符の組み合わせと重なりを楽しむ実験性を感じるのです。
良き相棒、良きスタジオ環境を得て音作りの試行錯誤を楽しんだ末の結晶。仄かなサウダージ感もあり、90年代のThe Sea and Cake、Tara Jane O'Neil等との親和性も。
ここ最近のリリースだけでもred go-cart、h-shallows + kazuhiro nishiwaki、BOAR HUNTER、three berry icecreamと多岐に渡る活動でも異彩を放つミキちゃん。やりたいことが多すぎて、時間がいくらあっても足りないのでしょうね。
僭越ながら、僕もThe Moment of Nightfallというプロジェクトでミキちゃんとご一緒させて頂いています。
ミキちゃんはとても研究熱心で真面目な人柄はもちろんなのですが、アイディアの閃き力、瞬発力、爆発力が凄まじく、とてもワイルドな人でもあります。
そんな多面的なヒロセミキさんの新たな一面に触れられる今作品を是非多くの方々に耳にして頂けることを祈り、この駄文を締めさせて頂きます。